オオワラジカイガラムシの越冬
カイガラムシ類は、カメムシ目カイガラムシ上科に属する昆虫の総称です。
草食性の昆虫であり、針のような口を植物の枝や葉に突き刺して汁を吸います。
中には農業害虫として問題となる種もあり、それらに対しての防除方法もよく
調べられています。
オオワラジカイガラムシは、日本では最大のカイガラムシであり、雌成虫の
体長は8~12mmになります。主にカシやシイ、クリなどブナ科の樹をに寄主とし、
それらの幹や枝で見られます。多くのカイガラムシ類と同様に、雄成虫には翅
があり、一見するとキジラミや小さなガのように見えます。翅は黒色で、頭部
や胴体は朱色をしています。雌成虫は翅が無く、体型は楕円形で体色は赤褐色、
触角や足は黒色をしています。また、背中側は蝋状分泌物質で覆われており、
白い粉が噴いたように見えます。
幼虫は雌雄問わず雌成虫によく似た姿をしています。
カイガラムシ類は、卵から孵化したばかりの幼虫にのみ歩行能力が
あり、その後は同じ場所に固着して過ごす種類と、自由に歩行可能な種の2つ
に分かれますが、本種は後者の特徴を持ち、あちこち動き回ることができます。
生活史を見てみると、年に1回の発生であり、成虫は5~6月頃に見られます。
産卵もこの時期に行われ、樹皮の裂け目などに卵を産みつけます。卵のままで
夏を越し、12月から翌年1月頃に孵化します。孵化した幼虫は、ただちに寄主
植物から吸汁を開始します。
しかし、時々この孵化した幼虫が建物の外壁や洗濯物に群がることがあります。
また、家屋内に集団で押し寄せることもあり、不快害虫として問題になります。
潰すと赤い汁が出ますが、これは彼らの体液の色によるもので、吸血などの被害
を与えることはありません。ただ、これが衣類や布団の上に付くと、跡が残る
こともありますので注意が必要です。