内部発生2
◆ 食品工場で問題となる主要な昆虫(内部発生編)・後編
前回より内部発生として問題となる害虫の発生場所(大きく分けて3箇所)についてお伝えしています.前回では,1つ目の発生場所として排水溝やピット(枡)などのウェットなエリアを紹介いたしました.今回は残りの2つを紹介します.
2つ目の場所としては,乾燥したエリアが挙げられます.1つ目のウエットとは真逆ですが,こういったところにはこういったところに適した害虫がいます.代表的なものとしてコクヌストモドキ,コクゾウムシ,タバコシバンムシ,ノシメマダラメイガ,ヒラタムシ類などといった貯穀害虫が主です.これらは穀類や乾燥食品等を食害し,食品工場の中でも製麺工場や製パン工場のような大量の粉を扱う工場では必ずと言ってよいほど発生・生息しています.そして,昆虫由来の異物混入クレームの中で多いのは,この乾燥食品害虫です.特にノシメマダラメイガの件数が断トツです.飛翔能力がそれほど高くないかわりに,幼虫時代の移動分散能力が高く,しがみつきや穿孔能力に長けているためと思われます.ノシメマダラメイガは,終齢幼虫で越冬しますので,この時期は幼虫の徘徊に要注意です.また,これらの害虫は一度発生してしまうと,その個体数を効果的に減少させるのが難しい昆虫群でもあります.彼らを防除する際によく用いられるのが性フェロモンなどを利用したフェロモントラップですが,これらはどちらかといえばモニタリングに効果を発揮するので,乾燥食品害虫発生の予察や早期発見に照準を合わせるのが良いでしょう.もちろん,それ自体トラップの役割を果たしているのですが,やはり清掃など他の防除法と併用するのが適当ですね.
3つ目はカビです.カビや塵埃を除去せずに放っておくとチャタテムシやヒメマキムシといった菌食性の昆虫が大発生します.どちらも非常に微小な昆虫なのですが,それらが何百匹,何千匹も群がっているのを見ると本当に恐ろしくなります.そして,彼らがたくさん生息していることが確認されたとしても発生源の特定が困難な場合が多々あります.食品工場では低温倉庫や冷蔵庫周辺,天井裏,空調設備の内部(もしくは裏側)など結露の生じやすい箇所で発生していることが多いですが,チャタテムシやヒメマキムシはなぜか製薬工場のようなクリーン度が高い工場でもしばしば問題となっています.防除の際,あまりにも個体数が多いのでつい殺虫剤に頼ってしまいがちですが,発生源の特定と清掃(特にカビの除去)を併せて行わなければ大
きな効果は見込めません.防除施工後,防カビ施工も同時に行うなど,菌食性昆虫の場合,微生物管理も視野に入れた方が良いでしょう.余談ですが,上に挙げたヒメマキムシはコウチュウ目というグループに含まれます.ヒメマキムシの菌食いは有名ですが,コウチュウ目の中では,他にもハネカクシやケシキスイ,ヒラタムシの類など様々な種が菌(主にカビ)を食べて内部で発生することが可能です.これらは,例えばカビの生えた食品やダンボールの下から発生することが多いですが,吸湿してカビが生じた古い穀粉中から大量に見つかることもあります.
内部発生が可能な昆虫はどういうところから発生するのか,またこれらの防除には清掃が不可欠ということがわかって頂けたでしょうか.