私の男
桜庭一樹著 「私の男」
消費されて終わる恋ではなく、人生を搦めとり、心を縛り支配し、死ぬまで離れないと誓える相手がいる不幸と幸福。優雅で惨めで色気のある淳悟は腐野花(くさりのはな)の養父。物語はアルバムを逆から捲るように、二人の過去へと遡る。震災孤児となった十歳の花を若い淳悟が引き取った。空洞を抱え愛に飢えた親子には、善悪の境も暗い紋別の水平線の彼方。そこで少女を大人に変化させる事件が起き……。黒い冬の海と親子の禁忌を、圧倒する恐さ美しさ、痛みで描ききる著者の真骨頂。